特別受益とは

こんにちは。
相続遺言あいち生活(終活)サポートオフィス
行政書士アイセイ事務所 です。
本日は、どのようなご用件でしたか?

こんにちは。
今日聞きたいのは、
亡くなる前に、もし子供にお金を渡していた場合、
実際、相続の時にどういう対応をしたらいいのか聞きたいんだけど、
どういった事になるのかしら。

お子さんにお金を生前に渡していた場合ということですね。
わかりました。
今日は、特別受益についてご説明いたしますね。

特別受益?
あんまり聞いたことがないけど、それはいったい何の事なのかしら。
生前贈与なら聞いたことあるんだけど。
特別受益 (とくべつじゅえき) とは

特別受益とは、
被相続人(亡くなった人)から生前に贈与を受けたりした利益のことで、
利益を受けた相続人と、受けてない相続人の間での不公平をなくすための
ものです。

ちょっといろんな言葉が入り混じってるので、わかりにくいですかね。

簡単にいえば、
生前に、何人かの子供のうちの1人に土地だったり家を買う資金とか
その他何かしらで援助していたら、それが特別受益となり、
死後、相続の遺産分割の時に、特別受益を考慮して遺産を分割するよって
感じですかね。

特別受益を受けた者のことを「特別受益者」といい、
特別受益者は、後から法定相続分の修正をすることから、
相続人であることが前提です。

あ、さっきよりわかりやすくなった。
なるほどね。

ですが、
被相続人(亡くなった人)が、遺言書で相続遺産の取り分を決めれるので、
生前に特別受益した分は、考慮しないで遺産分割をしなさいと、
定めることもできます。

これを「特別受益の持戻し免除」といいます。

ただし、特別受益の持戻し免除によって、
他の相続人の遺留分を超えてしまった場合、
遺留分を侵害された相続人が遺留分を請求することができます
・遺留分
相続人が、最低限の遺産を確保するために設けられた制度のことで、
兄弟姉妹以外の相続人には、相続財産の一定割合を取得できる権利(遺留分権)があります。

あ~、わかるようなわからないような。

生前に、子供のうちの1人がお金をもらっていたとしても、
遺言で特別受益の持戻し免除についての指定があると、
相続が始まった時に、特別受益の分のお金は関係なしに
遺産分割されるってことでいいのかしら。

そうですそうです。
しかし、遺産の額やら特別受益の額やらで、
他の相続人の遺留分より少なくなってしまった場合は、
遺言で「特別受益の持戻し免除」とあっても、
遺留分が侵害される場合は、持ち戻し免除されない場合もあります。
特別受益となるもの

では、どういうものが特別受益にあたるのかをご説明しますね。

単なる生活費の援助などだと、民法上での扶養義務にあたるとされて、
特別受益には当たりません。

特別受益となるものは、法律で、
「遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として
贈与を受けた」と定められていることから、
婚姻のための贈与、養子縁組のための贈与、生計の資本としての贈与が
特別受益にあたるとされています。

法律ってのは、それだけ言われても本当にピンと来ない表現よね。
全然わからないわ。
もっと具体的に教えてもらえるかしら。

そうですよね、これじゃわからないですよね。
では具体的に、どういうことか見ていきましょう。
【 婚姻のための贈与 】
婚姻の際の費用、持参金・支度金など婚姻に係る費用は特別受益となり得ます。
ですが、結納金や挙式の費用は、親が負担するものという認識があるため、
特別受益とはなりません。
【 養子縁組のための贈与 】
普通養子縁組の時に、実の親が持参金としてまとまった額を養子に出す子に贈与する場合、
相続分の代わりになるような贈与の場合は、特別受益とされ、
ご祝儀程度であれば、特別受益の範囲外となる可能性が高いです。
【 生計の資本としての贈与 】
扶養の範囲内の生活費の援助やお小遣い程度などの贈与は、含まれず、
扶養の範囲外となる部分での援助が、特別受益となります。
学費に関しては、
親が子供に義務教育を受けさせるのは義務であるということから、
義務教育に係る費用は特別受益とはなりません。
特別受益の対象となり得るのは、一般的な大学以上の教育、長期の留学などです。

この大学以上の教育などが対象となるとしていても、
被相続人(亡くなった人)の収入や職業などによっては、
その教育をさせるのが特別ではないと判断された場合は、
特別受益の対象外となります。

生計の資本としての贈与では、不動産の贈与もかかわってきます。
家の購入資金や、親から子供に土地を贈与したり無償で貸すなどでも、
特別受益となることがあります。
特別受益の法改正について

2019年に相続法の改正があり、特別受益について変更がありました。
どういうことが変わったかというと、
民法903条にこのような規定がされました。
婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する
民法903条より

つまり、法改正前までは、
夫婦で長年住んでいた自宅を、被相続人(亡くなった人)が配偶者に
生前贈与していて、遺言で、
特別受益の持戻し免除しますと意思表示していなかった場合は、
特別受益として取り扱われていました。

その分、受け取れる遺産が減ってしまっていたということですね。
それが、今回の法改正で、
結婚20年以上の配偶者に対する自宅の生前贈与について、
原則、特別受益にならないということになりました。

ということは、
法改正前は、特別受益にあたることになって、
遺言で意思表示してなかったら、
自宅の生前贈与分が引かれてしまうから、遺産の相続分が減っていたけど、
改正後からは、遺言で意思表示がなくても、
結婚して20年以上の夫婦なら特別受益にならないのね。

20年以上っていうのが、また何というかね。

長年っていうのが、20年以上って感じなんでしょうかね。
もし20年未満だったら、
今まで同様に、遺言に一筆書かれることをおススメします。

もうひとつ、法改正では、
生前贈与について、持戻す期間を相続前の10年間に限定しました。

どういうことかというと、
法改正前までは、
遺留分の基礎財産に含める贈与の期間制限はなかったので、
特別受益となる贈与は、相続開始の何年前でも何十年前でも、
遺留分算定の基礎となる財産に含まれるということでした。

今回の法改正で変わったのは、
相続人に対する贈与は、相続開始前の10年間にされたものに限り、
遺留分の基礎財産に含めることとなります。

つまり10年間てことで、
それ以上前の贈与だったら含まれないということですね。

じゃぁ、
生前贈与する場合は、
いつ誰にどういうものを生前贈与するといった内容を
きちんとしておかないと、遺産分割の時に、
大変になっちゃうね。気をつけておかないと。

制度の見落としは、大敵です。
きちんと把握したいときは
行政書士アイセイ事務所 にご相談ください。

